研究データの管理と公開 ;オープンデータの本質的意義
近年、研究成果の信頼性や再現性に対する社会的関心が高まる中で、論文本文だけでなく、その基盤となる研究データの適切な管理と公開が強く求められるようになってきました。とくに、公共資金によって実施された研究においては、データの可視化と再利用性の確保は、市民への説明責任としても重要な位置づけにあります。
このような背景のもと、国立大学法人徳島大学では「徳島大学研究データポリシー」を制定し、研究者に対して以下の責任と実践を求めています:
- 研究データを適切に保存・管理し、
- 公開可能なものについては原則として公開し、
- 必要に応じて再利用できる状態で提示すること。
このポリシーは、いわば大学における研究者としての倫理的・社会的義務を明文化したものであり、研究活動のあらゆる段階において、データマネジメントの視点を組み込む必要があります。
2025年申請分より採択される競争的研究資金に関しては,成果についてオープンにすることを義務としていますが,本学の研究者としては資金の種類に関わらず,オープン・クローズ戦略(下記)に留意しながらも,基本的に成果は全てオープンにしてゆく姿勢が必要に思われます.
GakuNin RDMを基盤とする研究データ管理の実践
このような流れを受けて、国立情報学研究所(NII)を中心に整備が進められているのが、GakuNin RDM(Research Data Management system)です。これは、研究者が研究データのライフサイクル全体(計画、収集、整理、保存、公開、再利用)を通じて、統一的かつ信頼性の高いプラットフォーム上で管理できる仕組みを提供するもので、徳島大学でも正式に2023年より導入・運用が始まっています。GakuNin RDMの主な特徴は以下の通りです:
- 学認ID(大学アカウント)で利用可能:大学教職員・学生がすぐに利用できる認証基盤。
- 研究プロジェクト単位でのデータ整理:プロジェクトメンバーとの共有や権限設定も可能。
- メタデータ付与の自動支援:公開時の検索性・再利用性を高める。
- 最終公開先への連携(JAIRO Cloud):研究成果を学術機関リポジトリへスムーズに登録・公開可能。
GakuNin RDMは単なるファイル保存ツールではなく、データ管理と公開の“設計思想”を体現するツールであり、研究者自身がその価値と役割を理解し、積極的に運用することが期待されます。
- GakuNin RDM (利用には学内での申請が必要です.→学認利用申請システム)
どういうレベルのデータをRDMに載せるべきかということに関しては一般論はありません.普段の研究活動においてデータは随時生成され,また破棄されるものかもしれません.その全てをRDMに乗せておけということではなく,研究過程を説明できるに十分な量のデータ本体,メタデータ,データカタログなどを保存することが基本です.
なお,GakuNin RDM自体には公開機能はありません.データ公開には次に紹介する,機関リポジトリJAIRO Cloud を用いる必要があります.
研究データの公開先としての機関リポジトリとデータ公開ワークフロー
研究データの最終的な公開先として、徳島大学では機関リポジトリ(JAIRO Cloud)を用意しています.オープンアクセスの項にある,セルフアーカイビング(グリーンOA)としての機関リポジトリと同じプラットフォームを用いています.したがって本学における研究公開ワークフローは次のものが想定されます:
- GakuNin RDM上で研究プロジェクトを作成し、データの整理・メタデータの入力を行う
- データ完成後,機関リポジトリへ連携申請を行う(受付:附属図書館)
- 適切なライセンス(例:CC BY)や公開条件を設定し、データセットを登録
- 附属図書館により公開作業を実施.DOIが付与され、論文等との双方向リンクを形成
このプロセスにより、論文本文だけでなく、その基盤となる研究データも「正式な成果物」として可視化され、研究の透明性と再利用可能性を飛躍的に高めることができます。加えて、研究データ公開の実績は、近年では研究費申請や機関評価においても、評価対象となりつつあります。
- 徳島大学機関リポジトリ(JAIRO Cloud)
- データ公開申し込み(準備中)
なお,GakuNin RDMと機関リポジトリによるデータ公開フローは,徳島大学の研究者に使用を強制するものではなく,また,代替する他のサービスも多く存在します.しかし,徳島大学が将来を見据えて全学利用を決定しているものであり,持続的な資源確保・メンテナンスや機能拡張を行います.利用をお願い致します.
オープン・クローズ戦略とバランスの重要性
すべての研究データを無条件に公開すべきというわけではありません。たとえば以下のような場合には、クローズ戦略(非公開または制限公開)も検討されるべきです:
- 個人情報や機微なデータを含む場合(医学・人文社会学分野など)
- 企業等との共同研究に基づく知財戦略上の制約がある場合
- 特許申請等が予定されている場合
- 将来的な学位取得や査読中の成果を含む未確定データである場合
このように、「公開可能なものは積極的に公開し、公開すべきでないものは計画的に保護する」というオープン・クローズ戦略のバランスが、研究データマネジメントの要となります。
信頼・再現性・社会への還元
研究データの適切な管理と公開は、単なる義務ではありません。以下のような本質的価値を有します:
- 科学の再現性(Reproducibility)と透明性(Transparency)の確保
- 異分野との連携・再利用(Interoperability)による新たな知の創出
- 公的資金に対する説明責任(Accountability)の履行
- 教育資源としての利活用(学生への演習データ提供など)
そして何より、研究活動に対する社会的信頼の礎となることが、最大の意義であると言えます.
論文のオープンアクセスと同様に、研究データのオープン化は、大学が社会とつながるための基盤インフラです。徳島大学においても、研究者一人ひとりがこの流れを理解し、データの計画的管理と公開に能動的に取り組むことが求められています。
資料
- 徳島大学研究データポリシー (2024/03/07制定)