
現在,競争的資金による研究成果は,即時オープンアクセス・オープンデータを求められています.その流れを保ったまま,大学の評価にも資するような当面の出版戦略として,次の手順を提案します.これに従えば,コスト的にも評判獲得の側面からも有効ではないかと思われます.
- まずは大前提として,予算的にも問題なければ,可能な限りハイインパクトなOA誌への投稿を検討ください.ハゲタカ誌に投稿するようなことにならないようご留意ください.ターゲット雑誌がDOAJ(Directory of Open Access Journals)に収載されていればリスクは低減できます.
- 現在,大手出版社の抱える論文誌の多くは電子ジャーナル化されていますが,プロプライエタリ出版においては著者負担は多くの場合無料であることを改めて認識ください.これは大学の購読契約により実現されている側面もあります.これら論文誌の多くは完全OAに移行してはいなくても,ハイブリッドOAを採用しています.したがってオープンサイエンスは実践しながらコストを抑えつつ前節の(1)〜(3)を満たす方法として,以下の手順が考えられます
- 自身の研究分野に近いテーマの論文誌(英文でインパクトファクタが付き,WoSのSCIE, SSCI, AHCI, ESCI に収録もしくはScopusに収録の雑誌)を,徳島大学が契約している大手出版社のハイブリッドOA可能なタイトルから探します.主要な雑誌タイトルは,附属図書館提供の主要電子ジャーナル契約タイトル情報から確認できます.Elsevier ScienceDirect, Wiley Online Library で合計3,600タイトルあります.実際にプロプライエタリ出版で無料かどうかは,各誌のIFA(Information for authors) を確認ください.
- 国内・国外に関わらず,学会系の論文誌については,近年,海外大手出版社のプラットフォームを利用したり,大手出版社に出版運営を委託するケースが多くなっています.これも学会単体での広報活動・事務の限界を見越しての判断と思われます.大手出版社とは関係のない伝統的に高評価な学会系論文誌も,契約タイトルの中に含まれていることもあり,また,ハイブリッドOAモデルを採用しています.贔屓の雑誌がScienceDirect, Online Library に収載されていないかをチェックしてみて下さい.プロプライエタリ出版,ハイブリッドOA出版のどちらか,もしくはその両方が減免されているかもしれません.一方で学会によっては出版が大手外資系であっても,会費・プロプライエタリ出版費用・OA化費用のすべてを支払う必要があるかもしれません.
- 成果を吟味したうえ,狙いをつけた大手出版社のハイブリッドOA可能なタイトル雑誌に投稿しましょう.ハイブリッドOA誌の多くは,当該論文についてあらかじめオープンアクセスを決心して投稿するのではなく,採録・校正後にOA化費用をオプションで払えばオープンアクセスにできるモデルが採用されています.場合によってはOA化費用について,大学として肩代わりできる,ないしは費用減免できる契約かもしれないので,附属図書館に問い合わせてください.(徳島大学で利用できるAPC割引等)
- ハイブリッドOA誌に投稿したが,予算的にプロプライエタリにならざるを得ない場合でも,著者最終原稿はほとんどの場合機関リポジトリで公開できます(グリーンOA).出版猶予期間(エンバーゴ)が設定されている場合はリポジトリへの登載が延期される場合もありますが,そのときは実績報告書等に理由等を記載することにより,国の求める即時オープンアクセス方針から逸脱することを避けることができます[1].同時に機関リポジトリへの各種データベースからのクローリングを通じて,ある程度ビジビリティは確保できる可能性があります(たとえば読者の検索作業の結果,機関リポジトリ収載の論文に行き着き,そこで示されるであろう論文本体の書誌情報などは確認され,論文本体の購読やダウンロード,そして引用につながり,流通すると考えられます).
- 繰り返しになりますが,プロプライエタリ出版後,十分時間が経過していてもOA化費用を払えばオープンアクセスに変更することが出来る場合があります.すると論文本体のビジビリティは向上すると考えられます.追加予算措置などがあれば検討ください.
- 即時に近いオープンアクセスが期待されているわけですが,グリーンOAがエンバーゴが原因で即時オープンアクセスにならないことに関して,補完的に他の手段で当該研究論文の内容が開示されれば目的は果たされる(速やかに研究成果を市民に公開することができる)と思われます.したがってターゲット論文誌投稿前に,プレプリントを出版しておくことが望ましい場合があります.査読プロセスを経ることにより,プレプリントと著者最終原稿との間に差異は現れるとは思われますが,十分研究内容を知るに足りる情報にはなると考えられます.公式版論文出版後には,プレプリントにおけるDOI情報等は,きちんと公式版にいざなうよう修正等も必要になります.
- データの管理はGakuNin RDMを使うことが望ましいですが,GakuNin RDMにはデータ公開機能はないので,出版に関係する研究データの公開に関しては,機関リポジトリを使えばDOI付きのデータの公開が無償で行えます.
- 簡単にまとめると,オープンサイエンスエコシステム図中の①〜④について,研究プロジェクト単位に,順に実施していただければいいかと思います.
これで結果として,これで国が求める即時オープンアクセス・オープンデータの義務を果たすことができるとともに,国際論文出版へのマインド移行,ビジビリティ(可視性,検索可能性)の担保,国際的評判の獲得が行えると考えられます.
参考文献
[1] 学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針、及び学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針の実施にあたっての具体的方策に関するFAQ, 項番14(令和6年10月8日更新)
(文責:オープンサイエンス担当副理事)