概要
ORCID(Open Researcher and Contributor ID)は,研究者を一意に識別するための国際的な永続識別子です.研究者は無料でORCID iDを取得でき,所属機関の異動や氏名の変更があっても,同じ識別子を継続して利用できます.ORCIDには,所属,研究業績,研究費,査読活動などの情報を記録でき,論文投稿システムや研究情報システムとの連携にも利用されます.また,出版社・学会や,Crossref,DataCite,JaLCなどDOI登録機関(Registration Agency; RA) との連携により,論文等の研究業績を自動的に登録・更新することもできます1.研究者にとっては名刺・CV代わりになる国際ID基盤と言えるでしょう2.
多くの国際論文誌ではORCID使用が事実上義務化されており3,本学でも多くの研究者が取得しているとは思われます.しかし現在(2026年5月時点)のところ,徳島大学では個人のORCIDに関する組織的コントロールはしていませんし,ORCID日本コンソーシアムにも組織加入はしていません.EDBともデータ連携はされていません.とはいえ,研究者の研究履歴を担保するうえでも重要なID基盤ですので,個人で取得して活用することを強くお勧めします.もしかするとそう遠くない将来においては,研究者公募への応募に必要なデータはORCIDから全部参照できる時代が来るかもしれません.
徳島大学機関リポジトリ(JAIRO Cloud)において任意の記事をDOI付きで公開した場合(著者最終原稿を除く)も,リポジトリのRAであるJaLC (Japan Link Center) からORCIDに書誌情報をプッシュさせることができます.
メリット
- 研究者の一意な識別: 同姓同名の研究者との混同を防ぎ,所属機関の異動や氏名の変更があっても,研究業績を継続して本人に結び付けることができます.
- 研究業績の一元管理: 論文,書籍,研究データなどの研究成果をORCIDに集約し,研究者の業績一覧として公開・共有できます.
- 研究業績の自動登録・更新: RAや出版社等との連携により,研究業績を自動的に登録・更新できます.ただし,必要なメタデータの登録や本人による連携許可が前提となります.
- 論文投稿・査読等の手続きの効率化: ORCIDに対応した論文投稿システム等では,ORCID認証によるログインや既存アカウントとの連携,研究者情報の入力作業の軽減が可能です.また,対応するシステムでは,査読活動等の履歴をORCIDに記録できる場合があります.
- 所属・研究費情報の管理: 所属機関や研究助成機関との連携により,所属,役職,研究費などの情報を登録・更新できます.
- 研究者情報の信頼性向上: 出版社,DOI登録機関,大学などが登録した情報について,その情報源を確認できます.これにより,本人による自己申告と第三者による登録を区別できます.ただし,情報の内容そのものを保証するものではありません.
- 研究情報システムとの連携: 大学の研究者データベースや研究情報管理システム等とORCIDを連携させることで,研究者情報の重複入力を減らし,情報の再利用を促進できます.
研究者が所属する組織が,ORCIDに団体として加入すれば,個人のデータのメンテナンスについて組織で管理することができるようになり,以下のような付加機能を得ることもできるでしょう.(本学は未加入)
- 研究者業績・経歴の正確で恒久的なトラッキング・把握,そのための編集
- 組織が個人のデータをトラストマーカ(後述)付きで付与できる
- 研究データの統合管理が可能となる
- 研究評価の透明性向上
- 研究評価・分析の高度化
- 機械可読な研究者IDによる論文・データ・人材のネットワーク化
- ライフログ・ナレッジグラフ構築
具体の準備・運用方法
- ORCID iDの取得
- ORCID公式サイトにアクセスし,氏名,メールアドレス等を登録してORCID iDを取得します.登録は無料です.
- すでにORCID iDを取得している場合は,新たに登録する必要はありません.既存のiDを継続して利用してください.
- プロフィールの整備
- ORCIDにサインインし,氏名,所属機関,研究分野などの基本情報を登録します.
- 論文,書籍,研究データ等の研究業績(Works)は,DOI等を利用した検索・取り込みや手動入力によって登録できます.
- 各情報の公開範囲は,研究者自身が設定できます.
- 研究業績の自動登録・更新の設定
- 出版社や学会が論文等のメタデータに著者のORCID iDを登録し,研究者がRAに必要な権限を与えることで,研究業績をORCIDへ自動登録できます.主要なRAでは,それぞれ次の設定を行います.
- Crossref(主に学術論文)
- ORCIDのマイページにサインインします.
- CrossrefからORCIDの受信箱(Inbox)に届く自動更新の許可依頼を確認します.
- Crossrefによる研究業績の登録・更新を承認します.
- 一度承認すると,以後はCrossrefに登録された本人のORCID iD付き研究業績が,原則として自動更新の対象になります.
- DataCite(主に研究データ等)
- DataCite Profilesにアクセスします.
- 「Sign in with ORCID」から,ORCIDアカウントでサインインします.DataCite専用のログインIDは不要です.
- 設定画面の「ORCID Auto-Update」で「Click to Enable」を選択します.
- DataCiteによるORCIDレコードへの書き込みを承認します.
- JaLC(ジャパンリンクセンター;J-STAGE登載論文誌を多く扱ってます)
- JaLCコンテンツ検索にアクセスします.
- 画面右上の「Sign in」からORCIDでサインインし,JaLCへのアクセス権を承認します.
- 画面右上のORCIDメニューから「Settings」を開きます.
- 「ORCID自動連携設定」をONにして保存します.
- 本人のORCID iDがメタデータに含まれるJaLC DOIの研究業績が,自動登録の対象となります.
- Crossref(主に学術論文)
- 出版社や学会が論文等のメタデータに著者のORCID iDを登録し,研究者がRAに必要な権限を与えることで,研究業績をORCIDへ自動登録できます.主要なRAでは,それぞれ次の設定を行います.
- 論文投稿・研究データ公開時の運用
- 論文投稿や研究データの公開時には,必ず自身のORCID iDを登録してください.
- 投稿・登録システムがORCID認証に対応している場合は,ORCIDによる認証・連携を利用してください.
- 出版社等がDOIメタデータにORCID iDを含めて登録することが,自動更新の重要な前提となります.
- 研究業績の確認・追加・修正
- 定期的にORCIDのWorksを確認し,研究成果が正しく登録されているか確認してください.
- 自動登録されない研究成果は,各RAの検索・取り込み機能や手動入力によって追加できます.
- 登録された情報には情報源(Source)が記録されます.研究者本人による登録と,DOI登録機関等による登録は区別されます.
- 重複した業績はORCID上でグループ化される場合があります.必要に応じて情報を整理してください.
- 連携権限と公開範囲の管理
- ORCIDのアカウント設定にある「Trusted organizations(信頼できる組織)」で,連携先に付与した権限を確認できます.
- 不要になった連携権限は,研究者本人が取り消せます.
- 所属情報や研究業績の公開範囲は,必要に応じて見直してください.
トラストマーカー(Trust Marker)と研究業績の信頼性について
ORCIDでは,研究業績や所属情報などについて,誰がその情報を登録したかを示す情報源(Source)が記録されます.このような情報の出所や登録経緯を示す情報は,トラストマーカー(Trust Marker)と呼ばれ,ORCIDレコードの信頼性を判断するために利用されます.アイコンとして
がマーキングされます.
- 研究者本人による登録: 研究者自身が論文等を手動登録した場合は,本人が情報源として記録されます.アイコンとしては
がマーキングされます. - 外部機関による登録: RA, 出版社が,研究者の許可に基づいて情報を登録した場合は,登録した機関が情報源として記録されます.アイコンとして
がマーキングされます.大学がORCIDに機関加盟した場合も,個人に対して登録した情報には
がマーキングされます(本学未対応). - 検索・取り込みによる登録: ORCIDのSearch & Link, 文献データベースの検索などを利用して研究業績を取り込んだ場合は,利用したサービスや登録経路に応じて,情報源と登録を行った主体が記録されます.この場合もアイコンとしては
がマーキングされます. - 所属情報の登録: 大学等が研究者本人の許可を得て所属情報を登録すると,その大学等が情報源として記録され,研究者本人による自己申告と区別できます.(本学はまだサポートしていません).
- 情報の信頼性の判断: 外部機関によって登録された情報は,その出所を確認できるため,研究業績や所属情報の信頼性を判断する際の参考になります.
研究者は,ORCIDの各項目に表示される情報源を確認することで,自己申告による情報と外部機関から登録された情報を区別できます.なお,ただし,トラストマーカーは論文の内容や研究成果の品質,登録情報の正確性をORCIDが保証するものではありませんし,トラストマーカーがないことだけを理由に,その研究業績や所属情報が不正確であると判断されるものではありません.
注釈
- ただし,この自動更新には,出版物のメタデータに本人のORCID iDが含まれていることや,研究者本人が連携先に必要な権限を付与していることなどが条件となります. ↩︎
- ORCIDはPIDにさまざまなデータが結びついた基盤ですが,国内で類似したサービスにResearchmap があります.昨今の公的研究資金の応募にはResearchmap も参照されるため,ORCIDとともに手入れをしておく必要があります.EDBからResearchmap へ,業績・履歴などのデータをコピーさせる機能がありますのでご利用ください. ↩︎
- 長い間,著者との連絡を図るためのIDとしては,メールアドレスが活躍してきました.論文にメールアドレスが埋め込まれていたこともありましたが,メールアドレスは異動,移籍で変わることがあり,恒久性・到達性も保障されておらず,PIDとしては甚だ不安定でした.今後はメールアドレスの代わりにORCIDが用いられることが多くなると予想されます. ↩︎
